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入退室管理システムと内装工事|2026年版 同時に進めるべき理由と発注の勘所

公開日 :

入退室管理システムと内装工事を同時に進めるとは|2026年時点の前提整理

入退室管理システムは、一般に電気錠(扉を電気的に施解錠する機構)、認証端末(カードリーダーや生体認証デバイス)、制御盤(複数扉の施解錠と履歴を制御する装置)、管理ソフト(権限設定や履歴管理を行うアプリケーション)という構成要素で成り立ちます。これらは単体の機器ではなく、扉・壁・天井裏・電気設備をまたいで配線でつながる一つの系統です。

内装工事と工事範囲が重なる部位

  • 扉:電気錠の加工、戸当たりやヒンジ部の配線通し
  • 壁:認証端末の取付下地、配線のための壁内ルート
  • 天井裏:制御盤から各扉への幹線経路
  • 電気設備:制御盤用の電源、ネットワーク配線との取り合い

つまり、内装工事で仕上げてしまう場所の内部を、入退室管理システムが通ることになります。ここが同時進行を検討すべき構造的な理由です。

後付けにすると何が変わるか

壁のボードが張られ、扉が吊り込まれ、天井が閉じた後に機器を決めると、隠蔽配線のルートがすでに失われています。その結果、露出配線やモールによる後処理、扉の再加工、認証端末を取り付けるための下地補強のやり直しといった追加作業が発生しやすくなります。いずれも機能上は動作しますが、仕上がりの見栄えと原状回復時の負担に影響します。同時進行であれば、同じ壁の中に経路を確保でき、扉も加工済みのものを搬入できます。

設備だけでなく運用ルールも初期設計に含める

2026年時点では、認証方式として顔認証などの生体認証を選ぶケースも増えています。この場合、機器選定と並行して個人情報の取扱いルールを検討しておく必要があります。個人情報保護委員会は、顔識別機能付きカメラシステムで特定の個人を識別できるカメラ画像や顔特徴データを取り扱う場合、個人情報の取扱いとなるため利用目的をできる限り特定し、その範囲内で利用しなければならないとの整理を示しています(個人情報保護委員会 ガイドラインに関するQ&A)。導入後に目的や掲示の方針を考え直すと、運用の見直しが必要になる場合があります。具体的な対応は第4セクションで整理します。

この記事が想定する読者

本記事は、オフィスの新規開設・移転・レイアウト変更にあたり、内装工事と並行して入退室管理の導入を検討している総務・情報システム担当者を主な対象としています。扉の数が数枚から数十枚規模、1フロアから複数フロア程度のオフィスを念頭に置いていますが、条件により最適な進め方は異なるため、個別の確認が前提となります。

内装設計の段階で決めておく技術要件|扉・配線・電源・ネットワーク

内装設計の段階で決めておく技術要件|扉・配線・電源・ネットワーク

入退室管理は、内装の実施設計図が固まる段階で技術要件を確定させておかないと、後から取り返しがつかない部位が多くあります。ここでは図面に落とし込むべき項目を部位別に整理します。

扉まわりで決めること

  • 電気錠の種別:電気錠には通電時に施錠するタイプと解錠するタイプ、モーター駆動のもの、シリンダー一体型で電源を内蔵するものなど複数の方式があり、扉の開き勝手や枠形状で選べる範囲が変わります。扉発注前に方式を決めるのが原則です。
  • 下地補強:錠前本体や電気ストライクを受ける枠側、および自動ドア制御機器の荷重がかかる壁面は、ボード施工前に補強を入れておく必要があります。
  • 通線経路:丁番側から扉内へ電源を送る場合、ヒンジ部に通線用の部材を仕込むか、枠内にルートを確保します。扉を吊り込んだ後では加工できないことが多い部分です。
  • ガラス扉の制約:框なしの強化ガラス扉は現場での穴あけができず、工場加工の時点で金具位置と配線穴を確定させる必要があります。

認証端末・制御盤の位置

認証端末は壁内ボックスを仕込む前提で位置と取付高さを図面化します。車椅子利用を想定する動線では低めの高さが求められる場合があり、用途に応じた検討が必要です。制御盤は複数の扉をまとめて制御するため、点検口や収納スペース、天井裏の配線ルートを内装側で確保しておきます。盤を納める箇所は保守時の開閉スペースも併せて押さえておくと、後から家具で塞がれる事態を避けられます。

電源とネットワーク

制御盤や自動ドアは専用回路が必要になる場合があり、分電盤の回路数に余裕があるかを早い段階で確認します。容量の考え方はオフィスの電源容量とAV設備の記事も参考になります。ネットワーク接続型の端末ではPoE給電の可否でケーブル本数が変わるため、スイッチの対応状況とあわせて決めます。配線計画はLAN工事まで一括で頼めるAVシステム工事会社の選び方の観点と共通する部分があります。停電時に解錠するのか施錠を維持するのかは、避難動線と防犯要件の両面から用途ごとに決め、非常電源やバッテリーの要否も併せて整理しておきます。

エリア別のセキュリティレベル

全扉を同じ仕様にする必要はありません。エントランス、執務室、会議室・来客エリア、サーバー室や書庫といった高機密区画などに分け、認証方式や記録の要否、入室だけか入退室両方を記録するかを区分します。この区分は平面図に色分けで示し、扉符号ごとに錠種別・認証端末・配線種別を一覧化しておくと、内装・電気・システムの各担当が同じ前提で動けます。

同時進行の工程設計|発注時期・施工順序・立会いのタイミング

同時進行の工程設計|発注時期・施工順序・立会いのタイミング

入退室管理と内装工事の同時進行で最も事故が起きやすいのは、機器仕様ではなく工程の前後関係です。内装側には戻れない締切がいくつもあり、そこを外すと解体や再工事が発生します。逆算で押さえるべき節目を時系列で整理します。

逆算スケジュールの骨格

  • レイアウト確定:扉位置と区画が固まらないと、どの扉を管理対象にするかが決まらない。ここが遅れると以降すべてが押す
  • 機器決定:扉ごとの方式と設置位置の確定。内装図面への反映が必要なため、着工前に終えておきたい
  • 先行配線:軽鉄下地が組まれ、ボードが貼られる前の期間に実施する
  • 扉建て込み・器具付け:建具搬入後、金物調整と並行して端末を取り付ける
  • 動作試験・初期登録:引渡し前の最終工程

ボード施工前に終えるべきこと

壁内に隠れる作業は、ボードを貼った時点で締切です。配線の敷設と端末取付用ボックスの仕込み、制御盤設置位置の確保、天井内のルート確保は、この期限より前に完了している必要があります。内装業者のボード貼り予定日を早い段階で共有してもらい、入退室側の作業日をその前に固定しておくと手戻りを避けられます。扉の加工が工場側で行われる場合は、建具発注の締切がさらに前倒しになる点にも注意が必要です。

ビル管理会社・情報システム部門との調整

テナント入居の場合、工事申請や作業時間帯の制約、共用部扉との干渉確認はビル管理会社の承認を待つ必要があり、ここが遅延要因になりやすい工程です。既存のビル側セキュリティと連動させる構成では、連動可否と条件の確認に時間がかかる場合があるため、着工前に照会を始めておくのが安全です。情報システム部門とは、ネットワーク敷設や管理用端末の設置場所、社員情報の受け渡し方法を事前に詰めておきます。部門をまたぐ確認は往復回数が増えるため、窓口を一本化しておくと進みが早くなります。

引渡し前の試験と初期登録

全扉の動作試験は、内装工事の仕上げと重なりやすく圧縮されがちな工程です。扉ごとに施解錠、認証、ログ記録、退出動作を確認し、不具合があれば是正する時間を見込んでおきます。カード発行や権限設定の初期登録は人数と区分に比例して工数が増えるため、入居日直前ではなく余裕を持った着手が望まれます。試験には内装業者、設備業者、入退室側の施工者、発注側担当が同席できる日程を早めに押さえておくと、その場で判断が進みます。なお、顔識別機能付きカメラを併設する計画がある場合、利用目的の特定など別途検討すべき事項があるため、工程とは切り離して確認しておく必要があります(個人情報保護委員会)。

発注前チェックリストと運用・法令対応|2026年に押さえる要点

発注前チェックリストと運用・法令対応|2026年に押さえる要点

発注前に確認すべきチェック項目

見積書を受け取った段階で、次の観点を一つずつ潰しておくと後の追加費用を抑えやすくなります。

  • 工事区分の切り分け:建具工事・電気工事・弱電工事・機器設置のどこまでが誰の見積に含まれるか、ボックス設置や電源確保の負担区分を明記してもらう
  • 責任分界点:ネットワーク側(社内LAN・回線)と設備側の境界、障害発生時の一次切り分けを誰が行うか
  • 保守条件:保守契約の有無、対応時間帯、駆けつけ対応の可否、解錠できなくなった場合の緊急対応手順
  • 増設余地:将来の扉追加や認証端末の台数増に備えた予備配線・空き回路・制御盤の空きスロット
  • 原状回復:退去時の撤去範囲(扉の加工跡、壁の補修、天井裏の配線残置の可否)と費用負担の事前合意

特に原状回復は、賃貸オフィスではビル側の基準によって扱いが異なるため、工事申請の段階で書面で確認しておくと安全です。条件により異なるため、個別の確認が必要です。

顔認証・顔識別機能を併用する場合の考え方

認証方式に顔認証や顔識別機能付きカメラを組み合わせる場合は、個人情報保護委員会の整理を踏まえる必要があります。顔画像や顔特徴データを扱うときは個人情報の取扱いとなり、利用目的をできる限り特定したうえでその範囲内で利用しなければならないとされています(個人情報保護委員会 ガイドラインに関するQ&A)。また、従来型の防犯カメラと異なり、犯罪防止目的であることだけでなく、顔識別機能を用いていること自体も明らかにして利用目的を特定する必要がある点が示されています(個人情報保護委員会事務局 資料1)。内装工事の段階で掲示物の位置や受付周りの案内方法まで含めて設計しておくと、運用開始時に慌てずに済みます。

運用ルールとして社内規程に落とす項目

  • 取得データの管理責任者と、閲覧・書き出しができる担当者の範囲
  • 入退室ログや画像データの保存期間と、期間経過後の消去手順
  • 本人からの開示等の求めがあった場合の受付窓口と対応フロー
  • カード・権限の発行手順、退職者・異動者の権限削除のタイミングと確認記録
  • 来訪者・常駐業者への一時権限の付与と回収の方法

まずは手元の見積書で工事区分と原状回復範囲が明記されているかを確認し、不足があれば発注前に書面化を依頼してください。費用感や条件を具体的に知りたい場合はお見積りフォームから、進め方や業者選びの段階から整理したい場合はご相談・お問い合わせフォームからお問い合わせいただけます。

この記事の著者

AVシステム・オフィス内装考察家川端 こうき

AVシステム・オフィス内装考察家

川端 こうき

数多くのオフィス内AVシステム、音響、映像工事や内装工事の現場を見てきた経験から、読者が損や失敗をしないように情報を発信しています。
当メディアでは、企業の法務部や管理部、または工事決裁者向けにオフィス内装工事、AVシステム工事の最新情報や技術情報を提供していきます。

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