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フリーアドレス導入時のAV・電源計画|2026年版 席が固定されない前提の設計手順

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フリーアドレスのAV・電源計画が固定席と決定的に違う点(2026年の前提)

フリーアドレスやABW型のオフィスを計画するとき、最後まで詰め切れずに残りやすいのが電源とAVの設計です。本記事でいうAV・電源計画とは、(1)コンセントの口数、(2)分電盤から各エリアまでの容量、(3)配線経路と表示機器(ディスプレイや投影機材)の配置、この3点をセットで決める作業を指します。どれか1つだけを先に決めても、残りの2つが追いつかなければ使えない席が生まれます。

固定席型とは設計の出発点が違う

固定席のオフィスでは、席数と機器の数がほぼ1対1で紐づきます。1人1台のPCと1台のモニター、という前提が成り立つため、席のレイアウト図さえ確定すれば必要な口数は積み上げで求められました。

一方フリーアドレスでは、誰がどこに座り、何台の機器をつなぐかが日によって変わります。朝は窓際に人が集まり、午後は会議エリアが満席になる、といった偏りも日常的に起こります。そのため座席数を基準に積み上げる方法では、人が集まるエリアで足りず、人が来ないエリアで余るという結果になりがちです。

代わりの基準になるのが、面積あたりの電源密度と、同時使用率です。一般的なオフィスではおよそ10〜12平米ごとに1つのコンセント設置が推奨され、執務エリアではデスク1つあたりPC用・モニター用・スマートフォン充電用などで3〜5口が必要とされています(パナソニック)。こうした面積基準の考え方は、席が固定されない前提と相性がよいものです。

席運用はすでに流動化している

ABWを実践している人に自席の座席運用を尋ねた調査では、半数近くがフリーアドレスであると回答しています(オカムラ)。働き方の選択肢を広げる取り組みと、席を固定しない運用はすでに同時進行しているということです。2026年時点では、フリーアドレスを例外的な形態として扱う前提そのものを見直す必要があります。

計画を誤ると現れる3つの症状

  • 延長コードの増殖:足りない口数を現場が自力で補い、机の下や通路に配線が溢れる
  • 使われない席:見た目は快適でも電源が届かず、常に空席のままになるエリアが生まれる
  • 映せない席:表示機器はあるのに接続手段や電源が合わず、会議のたびに場所を移動する

いずれも後から気づくもので、竣工後の改修は費用も工期もかさみます。だからこそ設計段階で、密度と同時使用率を軸にした検討が欠かせません。

必要な口数と容量をどう算出するか|面積・人数からの逆算手順

必要な口数と容量をどう算出するか|面積・人数からの逆算手順

フリーアドレスの電源計画は、席数ではなく面積と同時使用台数の2本立てで積み上げます。手順は、面積から口数の下限を出し、デスク単位の内訳で積み増し、出社率で同時使用台数を見積もり、最後にビル側の使用可能枠と突き合わせる、という流れです。

面積あたりの口数とデスク1台あたりの内訳

配置の下限は、おおむね10〜12平米ごとに1つという目安から逆算します。たとえば600平米なら50〜60カ所が最低限の設置点数になります。これはあくまで空間全体への散らばり方の基準で、執務エリアはこれに加えてデスク単位の内訳を積む必要があります。デスク1つあたりは、PC用・モニター用・スマートフォン充電用などで3〜5口が必要とされており(パナソニック)、フリーアドレスでは誰が座っても同じ条件になるよう、この口数を全席で揃えておくのが安全側の考え方です。

照明と主幹から容量の出発点を置く

容量側は、電灯設備がオフィス用途で1平米あたり15〜20VAという設計目安から始めます。1000平米なら約15〜20kVA、単相100V換算で150〜200A相当です。ここにPC・複合機・空調が乗るため、主幹容量は300A〜500A程度から設計を始め、必要に応じて増設を検討するのが一般的とされています。照明側の前提が変われば電灯負荷も動くため、器具の選定方針はオフィスの照明計画とあわせて固めておくと計算が安定します。

出社率を掛けて同時使用台数を出す

フリーアドレスでは全席が同時に埋まる前提を取る必要はありません。登録人数に想定出社率を掛けた在席数を基準にし、そこへノートPCの消費電力やモニター台数、共用機器を足して同時使用時の負荷を見積もります。ただし出社率は曜日や繁忙期で振れるため、平均値だけでなくピーク日の値でも一度計算し、両方の数字を残しておくと判断がぶれません。

公開基準と使える枠を突き合わせる

算出根拠として、公共建築物のオフィススペースにおけるコンセント配置の基準は、国土交通省が定める公共建築設備工事標準図(電気設備工事編)に記載されています。社内説明や設計者との確認で参照できる公開資料です。

一方で、テナントビルではビル管理会社がテナントの使用可能なコンセント容量を定めている場合があり、一括受電方式か個別契約方式かによって供給の管理方法も異なります。積み上げた必要容量が枠に収まるかは、入居前の早い段階で確認しておく必要があります。枠を超える場合の扱いは条件によって異なるため、オフィスの電源容量とAV設備もあわせて個別に確認してください。

配線しにくいエリアをどう埋めるか|共用AVと可搬電源の配置設計

配線しにくいエリアをどう埋めるか|共用AVと可搬電源の配置設計

必要な口数と容量を出しても、それをそのまま床に落とせない場所が必ず残ります。ラウンジやカフェコーナー、スタンディングの打ち合わせスペースなどがそれにあたり、ABW型オフィスではこうした電源を配置しにくいエリアが全体の約10〜20%程度を占めるとされています。理由は大きく三つで、一度敷設すると簡単に移設できないこと、床や壁の配線が景観を損ねること、そして配線に足を引っかけるリスクがあることです(パナソニック)。つまりこのエリアは、固定配線で解くのではなく別の手段で埋めるべき領域と考えたほうが現実的です。

可搬バッテリー電源は在席数ではなく利用率から台数を出す

持ち運べるバッテリー電源は、こうしたエリアの有力な解になります。台数は席数に合わせるのではなく、そのエリアが実際にどれだけ使われるかから算出します。ライブオフィスworXlabでの検証では、執務室の利用人数50人、フリースペースでの利用率を約10%とし、充電中の機体と入れ替える交換用を見込んだ結果、必要台数は16台と算出されています(パナソニック)。利用率だけで単純計算した数より多くなるのは、常に一定数が充電中で貸し出せない状態になるためです。台数を詰めすぎると、使いたいときに空きがないという不満に直結します。

充電ステーションの場所も運用の成否を分けます。目安として次の観点で決めます。

  • 固定配線が確保できている執務エリア側に置き、電源が引ける場所であること
  • 利用エリアから歩いて取りに行ける距離にあり、返却の手間が少ないこと
  • 主動線をふさがず、充電中の機体のケーブルが通路に出ないこと
  • 残量や貸出状況が通りがかりに目視できる位置であること

共用ディスプレイは設置位置とケーブル長をセットで決める

映す側も同じ考え方です。席が固定されない以上、どの席からも映せる状態が理想ですが、ディスプレイの設置位置だけを決めてケーブル長を後回しにすると、届かない席が生まれます。表示機器から実際に人が座る最も遠い位置までの距離を測り、机の脚や天板を回り込む分の余長を足した長さで選定します。余長が足りなければ使われず、逆に長すぎれば床に垂れてつまずきの原因になります。ディスプレイ自体も、主動線の横断方向に画面が向かないよう配置し、見る人が通路に立ち止まらない向きを選びます。

タップ増設で埋めるのは危険

電源が足りないエリアを、延長コードやタップの追加で埋める対応は避けてください。分岐や延長コードを繰り返し使うとブレーカの定格容量を超え、たこ足配線ではコンセントの定格容量を超えて発火に至る危険性があります(パナソニック)。配線しにくいエリアの解法を用意しないまま運用を始めると、利用者が自衛策としてタップを持ち込み、この状態が自然に発生します。設計段階で埋め方を決めておくこと自体が、安全対策でもあります。

発注前チェックリスト|図面・工程・将来変更への備え

発注前チェックリスト|図面・工程・将来変更への備え

算出した口数・容量と配置案は、図面と一覧表に落とし込まなければ施工者に正しく伝わりません。発注直前に確認すべき項目を、資料・事前確認・工程・将来変更の4段階で整理します。

施工者に渡す資料のチェックリスト

  • レイアウト図:家具配置に加え、座席として使う範囲・共用エリアの範囲・主要動線を色分けして示す
  • 電源位置図:床・壁・家具内それぞれの取り出し位置と口数を明記し、同時使用の想定が高いエリアを区別する
  • AV位置図:表示機器の設置位置、信号の引き回し経路、ケーブルの立ち上がり位置を記載する
  • 想定機器一覧:PC・モニター・複合機・表示機器・充電機器などを台数と消費電力の想定値とともに表にする
  • 将来計画のメモ:増席や配置変更の可能性がある区画を図面上で明示しておく

特に機器一覧は、回路の振り分けを判断する側の材料になります。台数が未確定でも、上限値を仮置きして渡すほうが手戻りは減ります。

ビル管理会社への事前確認

  • テナントが使用できる容量の上限と、増設を申請する場合の手順
  • 受電方式(一括受電か個別契約か)と、それに伴う申請先の違い
  • 床・壁・天井への加工可否、原状回復の範囲
  • 工事が可能な時間帯、搬入経路、共用部の養生ルール

容量の枠は建物ごとに定められているため、設計を固める前に照会しておくと設計のやり直しを避けられます。条件はビルによって異なるため、個別の確認が必要です。

工程の並べ方

原則として、電気の幹線・回路工事を先行させ、床や壁の仕上げ、最後にAV機器の設置と調整という順になります。注意したいのは、床下や壁内に収める配線は仕上げ後に変更しにくい点です。したがってAVの機器仕様と設置位置は、内装の仕上げ着手前までに確定させておく必要があります。家具の納品日と電気の通電日がずれると検収ができないため、工程表上で両者の前後関係を明示しておきます。

運用開始後の変更余地を残す

フリーアドレスは運用しながら配置が変わります。盤に予備回路を確保する、配線ルートに余裕を持たせる、床下や家具内から取り出す方式など移設しやすい供給手段を一部に残す、といった備えが有効です。見直しは出社状況が安定する導入後数カ月を一つの目安とし、延長コードが増えている場所を記録しておくと、次の工事で優先すべき区画が明確になります。

まずは自社のレイアウト図に、電源とAVの位置、想定機器を書き込むところから着手してください。口数や工程の妥当性、概算の費用感を具体的に知りたい方はお見積りフォームから、進め方や業者選びの段階から相談したい方はご相談・お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

この記事の著者

AVシステム・オフィス内装考察家川端 こうき

AVシステム・オフィス内装考察家

川端 こうき

数多くのオフィス内AVシステム、音響、映像工事や内装工事の現場を見てきた経験から、読者が損や失敗をしないように情報を発信しています。
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